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日本の再保険市場の現状は厳しい

はじめに

企業地震保険で日本の保険会社の保険会社ともいえる再保険市場の役割を担っているのはアメリカ・ドイツ・イギリス・フランス・バミューダなどの海外市場が引き受けています。また地震や水害などに対して海外の再保険市場にさらなる部分で依存するという状況が現在の日本の損害保険会社には難しくなってきています。

実は日本での再保険会社の最大手はトーア再保険会社です。そのトーアでさえも世界的なシェアは1%程度で世界21位と目立った数字ではありません。また株主資本額についても大手の再保険会社とは大きな開きがあります。また日本で損害保険の再保険についての事業許可を取得して支店を開設している海外の再保険会社も2社しかありません。これは危機的な状況ともいえます。

再保険会社が育つだけの土壌がなかった

日本では船舶保険や機械保険などには再保険プールや共同保険機構が組織されていて制度として制度として国内損害保険会社としてリスク分散が行われています。さらに企業向けの火災保険や建設の工事保険などについても損害保険会社間で相互に再保険を引き受け合うことによってある程度のリスク分散が図られてきています。

地震や水害などの自然災害には莫大な保険金の支払いになってしまう可能性が高いこともあって再保険の引受にはより大きな資本の引受が重要になってきています。ただ終戦後の日本はそれだけの資本経済力がありませんでした。そこで日本で資本を調達するよりも海外の再保険市場に依存をした方が合理的ではないかということになりました。

また終戦後に大きな災害があまりなかったということもあって日本で再保険市場を行うためのルール作りは検討されることなくここまで来てしまったというのが実情といえます。

また企業向けの地震保険や風水害に対するエクスポージャの評価も日本の損害保険会社と海外の再保険会社で大きな差があります。ここでエクスポージャーとは企業などが持つ金融資産の中で市場の価格変動のリスクにさらされている資産の割合のことをいいます。このエクスポージャーが日本の損害保険会社の方が高いということからも日本の自然災害に対する再保険の購入額の拡大をしていくことが難しいという問題にあたってしまいます。

キャプティブ保険会社などを作る

また損害保険会社から保険を購入していく以外の方法を考えてみるとデリバティブや保険リンク証券などを発行する方法もあり得ます。またキャプティブ保険会社などを作ることも可能性としては考えられます。

ただデリバティブや保険リンク証券も基礎的なところが他とあまり変わらないので大きな改善は望めそうにもありません。適切な保険の条件の設定ができないような状態であれば代替手段として考えられる保険リンク証券も条件の設定ができないということにもなるので難しいところがあります。

また仮にキャプティブ保険会社を作って保険証券を発行したとしても再保険にまで行くことができないということになるとその意味は大幅に減殺されます。したがっていずれの方法で行うにしても大きな再保険市場となるスキームを日本に作るという必要性は変わらないのかなという気がします。

海外の再保険会社に依存する

こうなってしまうと国際再保険市場に活路を見出すことはできないのかを考えていきます。現状の日本で大掛かりな金融システムを作ることはかなりの難易度になります。そうなると国際再保険市場のわがままを聞いてあとは損害保険会社の自己責任で行うのもいいのではないかという意見もあります。ただそれも難しいというのが本音のところです。

それにはまず国際再保険市場と日本の損害保険会社のエクスポージャーの評価の差の解消を行う必要があります。つまりは再保険料率の大幅な引き上げに加えて再保険会社の事業リスクの緩和のためには地震や台風などの自然災害以外のリスクについても再保険会社の役割が大きくなってきます。そうなってくると損害保険会社の基本的経営・財務基盤・戦略に大きな差が出ることが予想されます。

また日本の再保険会社の再保険料収入は世界全体のおよそ1%ほどしかありません。この程度の市場では日本が自らの力で国際再保険市場の流れを変えることはかなり難しいものになります。ということもあって日本が国際再保険市場に過度に依存をするということはかなり危険度が高くなるということにもなります。

ただでなくても日本の再保険市場は欧州の再保険会社にとても大きく依存をしており欧州の金融危機が深刻化する場合には再保険のキャパシティーに大きな影響が出てしまいます。キャパシティーの減少によって再保険の需要と巨級の関係に大きな狂いが出てくることが予想されます。そうなってしまうと再保険の加入料が膨大に高くなってしまうことも考えられます。そうなると日本の損害保険会社には死活問題にもなりかねません。

日本に再保険市場を作ることはできないか

損害保険会社は個人や企業の抱える様々なリスクを保険という形で引き受けることを本業としています。ただその額も巨額ということもあって地震などの自然災害に対する保険の引受を行うことが大きくすることができないというジレンマに陥っています。この自然災害に対するリスクだけで考えていくと製造業の経営の安定と損害保険会社の関係は利益相反をしてしまう可能性が高いということです。

この問題を解決するためには損害保険会社と再保険会社の間で一定の共通認識を作れるような関係にすることが大事になってきます。ただ日本から離れている海外の再保険の資本の理解と協力を得ることはかなり難しいです。そうなってくると再保険事業に関する日本の規制のルールや税制を欧米並に柔軟にしていくことで海外の再保険資本が日本に拠点を置きやすい環境を整えていくことも重要になってきます。

海外の再保険資本が日本の市場に資本を持ち込んで日本で再保険事業を行えるという可能性が高くなると必然的に日本への持ち込みの資本量が増えます。そうなると為替問題や外国市場の経済危機などに左右される可能性は低くなってきます。また日本から国際再保険市場に出回っている再保険料の5000億円といわれている資金の一部を国内で運用をすることも可能になります。

国際再保険を買い続けるのは難しい

実際の国際再保険市場にはキャパシティーにそれなりの余裕はあります。ただそれを購入するためには再保険の料率が大幅に上昇してしまう可能性が高くなります。そうなると損害保険会社の保険料率と比べて見合わないという問題が起こってきます。日本の損害保険会社の再保険市場の多くはドイツ・フランス・イギリス・アメリカ・バミューダなどに限られていますので再保険の購入額をさらに増やしてしまうことによって彼らにさらなる依存をしてしまうことになります。自社の運命をこれらの国にかけてしまうという点で大きなリスクを生じてしまいます。

大きな市場を利用して日本に不足しているものを確保するという考えもたしかに一理はあります。ただ終戦後のような資金に余裕のなかった時代と今は異なります。日本にも大きな金融資産があります。にもかかわらず大半の資本を国際再保険市場に委ねることは決して最善策とはいえません。

いずれの方法も決め手に欠く

現状では日本での地震や台風などの自然災害のリスクやタイなどのような海外の自然災害のリスクに対する保険を支えるような大きな再保険市場のキャパシティーが今の日本にはありません。またそれを国際再保険市場から追加購入をすることでカバーをすることも簡単ではありません。

そうなってくると規制緩和や税制・税率を変更して日本の経済希望とリスクの量に適した再保険の市場とスキームを作ることが求められます。日本の再保険市場が構築されるまでにはまだかなりの機関がかかると思って間違いないのかなという気がします。

地震保険は簡単に加入できない

ただ現状では日本の企業地震保険には簡単に入ることができません。家計地震保険は再保険制度というものがあって国が引き受け元になってくれるのですが、法人の地震保険にはそれが適用されません。

地震保険はまだ大企業などの一部の企業しか入ることができないというのが実際のところあります。ほとんどの中小企業は入ることができません。

また地震保険は営業などができなくなって逸失利益が発生してしまう場合などの間接損害にはほとんど適用されません。さらに工場などの倒壊などの直接費用などに対しても契約時の保険金額の5%から10%程度しか保険金が受け取ることができないことが多いです。たとえば契約時に10億円補償の地震保険を契約しても実際は5000万円から1億円程度しか手元に戻ってこない可能性が高いということです。これでは地震保険に加入するメリットがあまりありません。