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特集
リスクファイナンスとリスク管理
はじめに
阪神大震災・東日本大震災・スマトラ沖地震などのように地震で各国の経済や社会に大きな被害をもたらしました。2018年末にはインドネシアでの大地震がありました。
2019年にはるG20財務大臣・中央銀行総裁会合では自然災害に対する財務面での備えである災害リスクファイナンスを1つのテーマとして取り上げられています。そこで災害への財政対応に関する地域の教訓について活発な議論が行われました。
ここではこのリスクファイナンスをテーマに考えていきます。
リスクファイナンスとは
災害リスクファイナンスとは、自然災害が起こった際に迅速でかつ効果的に復旧・復興するために事前に財政負担を明確にした上で財政面での備えを強化する仕組みのことをいいます。過去の伊勢湾台風や阪神大震災などを通して防災体制を強化していく中で、国や地方公共団体間の財政負担や関連対策費・基金などの財政関連施策も整備しています。
1966年の地震保険制度が整備されました。官民連携で地震保険が提供されています。中国やインドネシアなどの地震国でも中央政府の費用負担や住宅やインフラを対象にした災害保険制度などのいろんな制度が関連しています。
災害後の対応は救助・復旧・復興の3段階に分かれていきます。被災者の救出や避難所の設置などの救助の段階では大きな資金が必要でない一方で1日でも早い資金動員が求められます。また復旧では救助よりも緊急度は落ちますがより資金がかかります。またインフラ整備や地域おこしなどの復興となるとさらなる資金が必要になります。
災害の場合は初動の対応が遅れてしまうと社会や経済に大きな影響が出てしまいます。救助や復旧に備えるための資金は前もって必要になります。ただ途上国の場合は自国だけでその資金を集めることをとても困難です。緊急的な国債を発行しても間に合わないので国際的な支援が必要になってきます。
災害後の国際支援では各国際機関・政府の支援金額や支援策決定まで1年程度かかります。さらには各国政府に資金が振り込まれた後でも具体的な被災地支援にたどり着くまでに複数年かかってしまう例もあります。
リスクファイナンスとリスク管理
リスクファイナンスは災害リスクの予防や備えさらに対応を包括的に強化する災害リスク管理の一要素になります。リスクファイナンスは災害を未然に防ぐ防災と補完関係になります。リスクに対応するということは事前にリスクを特定して軽減して備えていくことが重要になります。
ただ途上国ではインフラ整備よりも都市化を進めてしまう傾向がありますので災害発生時のダメージが大きくなります。中国やインドネシアなどがその顕著な例といえます。このような地域では耐震性・排水設備の強化・メンテナンスの強化に対しても資金が不足しています。
仙台防災枠組み2015-2030ではハードとソフトの両面での防災強化を伝えています。ハード面では耐震性の強化・排水能力の強化で災害に強く質の高いインフラの整備をしていきます。またソフト面では防災計画の策定や建築基準の強化さらに土地利用政策の改善などの制度的な面での改善が求められます。
ただ防災施策によって災害発生を防ぐことは困難といえます。防災施策によって災害の発生を完全に防ぐことは困難といえます。財源も必要なので資金面での限界もあります。防災と財務面での備えを万全にしてリスク面を強化していくことが重要となります。
政府がリスク保険に加入
日本では被災者支援やインフラの災害復旧・復興などの多くの場面で国が財源を確保していくいわば再保険の役割をしています。地震保険でも日本政府が再保険者となって最終的な支払いの責任元になっています。ただ政府が自然災害というカテゴリーで民間の保険会社から保険を購入した例はありませんので途上国側から見ていくと変わった取り組みと見られているようです。
諸外国では政府が民間の保険に加入する例も少なからずあります。ニュージーランドではインフラ施設が災害を受けた場合の再建額を中央政府:地方政府で6:4にしつつも地方政府は負担を賄うために民間の保険会社が提供する保険に直接加入しています。また水道の地下インフラについては地方政府独自のリスクプールを設けて保険に加入しています。
またオーストラリアでもに州政府で主にインフラ向けに民間再保険を活用したリスクプールを設けています。
一方途上国では先進国以上に災害後の財政に大きな問題を抱えています。自国の経済や財政に対する信用が先進国ほどはないので国債で資金を調達することも困難といえます。このため事前に資金を蓄えておく予備費や資金だけでなく災害後に備えた融資プログラムや保険のプログラムを活用しています。
今後の方向性
東日本大震災以降日本は災害のリスク管理や防災を重視するようになりました。日本は自ら復興に取り組むとともに途上国の災害リスク管理に貢献していくという強い意志を示しました。またG20などを通して国際開発分野で重要視されている質の高いインフラ投資を行っています。
日本は世界でも有数の災害大国です。このためリスクマネジメントなどの分野は世界的にも進んでいます。リスクファイナンスを含むリスク管理は資金貢献に加えて知的貢献と人的貢献をセットにできる分野なので日本人の知の部分が活かされる分野で世界でも専門家の多い分野となっています。
欧米や途上国でも政策・技術の両面で目覚ましく発展しています。日本の技術を移転するだけでは他国に遅れを取る可能性が高いです。途上国からも学ぶという低姿勢も重要になります。
日本は国際会議で災害の予防・備え・対応を包括的に強化することそして災害リスクを捉えることの重要性を伝えています。危機が生じた時の対策や未然の防止だけでなく財務面での事前準備を含めて包括的に対応すべき課題といえます。
災害のリスクファイナンス及びリスク管理についても今後も一貫として国際的な議論を行っていきます。これが途上国での政策実現に貢献をし続けることが期待されています。