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自然災害に対する企業の意識調査

はじめに

日本をはじめとするアジアは自然災害の多発地帯です。日本・中国・インドネシアなどは大地震の多発地帯でマグニチュード8クラスの地震も少なからず来ています。また災害に対する経済損失は近年上昇しています。

また日本企業では事業継続計画や事業マネジメント計画が思ったほど浸透をしていないことも分かってきています。また災害保険に未加入の企業も多くなっています。それらについて以下で紹介します。

災害発生頻度

まず日本・中国など東アジア・東南アジア・南アジア・中東などのアジア地域と欧米などのその他の地域の年間の災害発生頻度を比較してみました。

これをみていくと実線のアジアの災害の発生頻度が明らかに高いことは分かります。ざっと見て2倍程度の発生頻度になっています。しかも2000年以降に発生頻度が上がっています。おそらく温暖化による台風の巨大化さらには集中豪雨などが増えているものと思われます。

また日本・中国・インドネシアなどアジアは巨大地震の発生する地域です。アジア太平洋プレートなど大地震を引き起こすプレートが何本もこの地域は走っています。

今後もアジアを中心に大きな災害に見舞われてしまう可能性は残念ながら高いと言わざるを得ません。

経済損失

世界による自然災害による経済損失を1980年前後(75‐84)1990年前後(85‐94)2000年前後(95‐04)2010年前後(05‐14)の4つの時期に分けています。これを見ていくと10年単位で倍々に損害額が上がっているのが分かります。1980年前後を1とすると1990年前後はおよそ2倍。さらに2000年はその2倍。さらに2010年はその1.6倍程度。およそ30年で6.5倍程度の経済損失額になっています。2010年にはその額は世界で2兆米ドル(220兆円程度)にもなります

またその中でも黒枠の保険填補損失がだいたい3割。その他7割をグレーの枠の保険非補填損失が大きく上回っています。ここから災害を保険でカバーできていないことが分かってきました。

災害対策

次に企業単位でのBCP(事業継続計画)BCM(事業マネジメント計画)ができているかどうかのデータです。中小零細企業と中堅大企業の2つのカテゴリーに分かれます。

中小零細企業760社のうちで事業マネジメント計画を策定している会社は4%超の31社。事業継続計画を策定・訓練している会社は16%弱の120社。事業継続計画策定は18%超の138社。事業マネジメント計画・事業継続計画ともに策定なしが62%弱の471社になります。中小零細企業は事業継続計画すらなされていない会社が6割以上あるということです。

一方中堅大企業920社のうちで事業マネジメント計画を策定している会社は6%超の57社。事業継続計画を策定・訓練している会社は21%超の195社。事業継続計画策定は24%弱の217社。事業マネジメント計画・事業継続計画ともに策定なしが49%超の451社になります。中堅大企業でも事業継続計画を行っていない会社が半数近くあります。ただ中小零細企業よりは事業の継続リスクを考えているということも分かってきています。

トータル1680社では事業マネジメント計画を策定している会社は5%超の88社。事業継続計画を策定・訓練している会社は19%弱の315社。事業継続計画策定は21%超の355社。事業マネジメント計画・事業継続計画ともに策定なしが55%弱の922社になります。全体では半数以上の会社が事業継続計画すら着手をしていないというデータがあります。

災害保険

次に地震保険などの災害保険に加入しているかどうかを中小零細企業と中堅大企業とに分けて比較していきます。若干前述の災害対策と加入企業が異なっています。

中小零細企業761社のうちで災害保険に加入していない企業が53%弱の403社。何らかの災害保険に加入しているという会社が47%超の358社でした。半数近くの企業が何らかの災害対策の保険に加入しています。ただまだ過半数の会社が災害対策の保険に未加入となっています。

また中堅大企業の927社のうちで災害保険に加入していない企業が41%超の381社。何らかの災害保険に加入しているという会社が59%弱の546社でした。逆に6割近い企業は何らかの災害対策の保険に加入しています。ただまだ4割程度の会社が災害対策の保険に未加入となっています。それなりの企業規模を有していてもまだ災害保険に加入しないところも多いということです。

トータル1688社で災害保険に加入していない企業が46%超の784社。何らかの災害保険に加入しているという会社が54%弱の904社でした。全体では半数以上の会社が何らかの災害保険には加入しているということです。ただまだ45%程度の企業が災害保険未加入ということも分かってきました。

加入しない理由

次に保険に加入しない理由をいくつかにまとめてデータ化しています。理由としては保険料が高い・補償内容が限定・災害にあまり関心がない・保険だけでは事業を再開できないの4つの理由が主です。それを中小零細企業と中堅大企業とに分けて検証をしていきます。

保険料が高いという理由で加入しなかった会社は中小零細企業387社のうちで31%弱の119社と意外と多くありません。7割の会社は保険料の高さが理由ではないと回答しています。一方中堅大企業366で保険料の高さを理由に加入しなかった会社は3分の1程度の123社とほぼ同じような割合です。3分の2の243社は保険料が理由ではないとのことです。

次に補償内容が限定されているという理由で加入しなかった会社は中小零細企業387社のうちで4分の1超の99社とやはり多くありません。4分の3の会社は補償内容の狭さが理由ではないとのことです。一方中堅大企業366社のうちで補償内容が限定されているという理由で会社はやはり4分の1超の94社とほぼ同じような割合です。やはり4分の3の272社は補償内容の狭さが理由ではないとのことです。

災害にあまり関心がないという理由で加入しなかった会社は中小零細企業387社のうちで42%超の164社とだいぶ多くなっています。中小零細企業の経営者にはまだ災害で会社経営が厳しくなるということにままだピンと来ていない方が多いということです。日々の業務や利益を上げていくことで精一杯という企業が多いものと思われます。また中堅大企業366社の中でも39%超の144社は災害にあまり関心がなさそうです。同様に利益を確保するだけで精一杯の状況なのかもしれません。ただ中小零細企業・中堅大企業ともに6割程度の経営者は災害の重要性は認識しているというデータも分かりました。

まだ保険だけでは事業を再開できないという切実なデータもあります。中小零細企業387社のうちで21%弱の81社はこのことを理由にして保険に加入しないようです。保険に加入しても保険だけで賄えないのであれば災害が起きた時点で事業が終了だから加入しても仕方がないという理由なのかもしれません。また中堅大企業366社でも同じように22%超の81社が同様の理由で保険に加入しないようです。思ったほど保険の額が下りないのでこれでは事業を再開できない可能性が高い。それでは保険の無駄使いだろうということになってくるのかもしれません。

まとめ

自然災害は温暖化による豪雨災害を中心に年々増加している。特にアジア地域は地震・豪雨災害とも発生のリスクが他地域よりもかなり高い。

1980年前後・1990年前後・2000年前後・2010年前後と世界での自然災害の損害額はほぼ倍々で上がっている。およそ30年で7倍近くも上がっている。しかも保険未加入の損害額が7割ほどと保険でカバーできずにもったいない部分で損害額が大きくなっている。

中小零細企業は6割超・中堅大企業でも5割近くの会社が事業継続計画・事業マネジメント計画共に策定できていない。災害に関する危機意識がまだ高まっているとは言えない状況。

保険に加入していない大きな理由としては災害に関心がない・保険料が高いが2大理由。その他補償内容が限定されている・保険だけでは事業を再開することが厳しいという切実なデータも出てきました。このあたりをどのようにカバーしていくかが今後の災害保険の考え方になってくるかもしれません。

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